温泉天国ハンガリー・ブダペスト・ルカーチ温泉
温泉都市ブダペストでも、特に、ブダ側ヨーゼフ山とドナウ川の間の地帯には、古代ローマ時代から、温泉が湧き出ていたそうです。
ここに、ルカーチ温泉という温泉があります。
この名は、キリスト教エヴァンゲリクシュ派の聖職者で、病気に苦しむ多くの人の世話をしていた聖ルカーチにちなんだもの。

古く12世紀には、このルカーチ温泉周辺に、病気の治療、療養を専門にした聖ヤーノシュ騎馬隊が駐在していたと言われます。また、その後に続いたロドスやマルタの騎馬隊によって、修道院の隣に温泉が造られたそうです。
ブダペストでは、昔から、社交・娯楽の場として、また、宗教的意味を持つものとしての温泉は多くありましたが、ここルカーチ温泉では、はるか昔から、病気の治療と温泉がしっかりと結びついていたのです。
昔々、神秘的で貴重なエネルギー源であったろう温泉。
ルカーチ温泉は、トルコ占領時代、「粉挽き温泉」と呼ばれたこともあるそうです。というのも、この温泉の湧きいずるエネルギーを利用して、銃弾用の火薬生産やトウモロコシ、小麦粉挽きが行われていたから。当時の指導者ムスタファによって、温泉エネルギー利用の製粉機やそれ専用の池も作られました。
ルカーチ温泉の目の前には、その当時からの名残であろうMalomtó(マロムトー・挽き臼池)という名の池も残っています。
トルコ占領時代にも、この温泉は使われていましたが、1857年に折衷様式で建築が進められ、今の建物の原型となっています。
また、屋外プールは、1885年に完成しました。
その後、1937年に飲泉施設が作られ、1979年には、ブダペスト初の温泉治療複合施設(デイケアのサービスが受けられる温泉施設)としての整備が行われました。
また、2010年までのリノベーションで、機能的に生まれ変わっています。
古くから、医療と密接な関係を持って、ブダペストの市民の癒しの場として賑わってきたルカーチ温泉。
入浴だけではなく、温泉の特性を生かした様々な治療を、専門医の指導により受けることができます。
首を固定して脊柱を整えるための入浴方法には、専用の浴槽が用意されています。
また、末端部や関節などの幹部を集中して治療する部分バス、温泉泥を使った医療パック、マッサージに飲泉など、温泉を最大限に活用した医療システムが整っているハンガリー。人口の薬ではなく、天然のエネルギーを利用して、本来の健康を取り戻すのです。
ハンガリーの人々にとって、温泉は健康を保つための宝物とも言える存在でしょう。
このルカーチ温泉の癒しの場の一つに、樹齢数百年のプラタナスが茂る広い中庭があります。
まるで、街中のオアシスのような安らぎの空間が、訪れる人の心を潤おしてくれます。

中庭に面した建物の壁面には、この温泉の大切さを物語るものが。。。
卵色の温泉施設の壁に所狭しと貼り付けられた大理石プレートの数々。
いろいろな色や形のプレートに興味をひかれて見てみると。。。
「この温泉は、私を長年苦しませてきた病気から自由にしてくれました」、「6週間で大病が治りました」、「心から神様に感謝します!この温泉が未来永劫に渡り、人を癒し続けますように!」などと、刻まれています。
このルカーチ温泉で湯治をし、治療を受けた人々の感慨が詰まっていますね。
なんと、ハンガリー語だけでなく、ドイツ語で刻まれたものまであるのです。
効能書きより何よりも、この温泉のパワーについて、説得力を持って証明しているこれらのプレートは、ルカーチ温泉のシンボルです。
また、忘れてならないのがこの方。
聖ルカーチの彫像も飾られています。
この像は、何と1760年に作られたものだとか。。。
永い歳月に渡り、たくさんの人を救ってきたのでしょう。

ルカーチ温泉の屋外プールには、色とりどりの水泳帽を被った人々が、思い思いに泳いでいます。
カラフルでユニークな形の水泳帽でお洒落をするのも、ハンガリー流。
ひょうたん型をした温めのアミュージングプール。
改装された屋内の浴槽。
モダンな深い浴槽もできました。
建物入口にある飲泉場には、多くの人が水を汲みにやってきます。

昔から湧き出続ける、奇跡の湯は、炭酸水素塩泉(含カルシウム、マグネシウム等)で、関節痛、関節炎、神経痛などに効果があるそうです。また、飲用では、胃腸の病気に幅広く効くとか。
 → ルダシュ温泉に続く

  撮影:JapHun MediArt、他ネットアーカイブ