ハンガリー・Hortbágy(ホルトバージ):「大平原の家」馬と暮らす人々

 ハンガリー東部には、見渡す限り地平線、どこまでもまっ平らな大平原「PUSZTA:プスタ」が広がっています。
 ヨーロッパ最大の大平原、プスタ。
 樹木も生えず、畑もないこの大地には、永遠の草原があるばかり。
 空が近くに感じられます。
 ハンガリー大平原。
 360度の地平線。
 ホルトバージ一帯の約2300平方キロメートルの広大なプスタは、1999年11月にユネスコ文化遺産に指定されました。
 ホルトバージのシンボル、9つのアーチの石橋。
 ハンガリーで最も長い石橋として有名です。
 プスタには、伝統的にTanya(タニャ)と呼ばれる1軒の独立した家と家畜小屋が作られていました。
 これは、大平原で放牧をしながら暮らす人の住まい。
 周りはただ広く、広く広がる草原。
 そして、その草原で草を啄ばむ家畜たち。
 中には、こんな牛。
 「灰色牛」と呼ばれるハンガリーの固有種です。
 その角が見事。
 古くから肉牛として飼育されていました。
 牛の群れのことをグヤと言い、牛飼いのことをグヤーシュと呼びます。
 ハンガリーで最も有名なスープ、「グヤーシュ・スープ」は、グヤーシュたちが、大平原で野外炊飯をして食べていたもの。
 こちらもユニークな角。
 くるくると捩れた角がトレードマークの「ラツカ」と呼ばれるハンガリー固有種の羊です。
 こちらは「ビバイ」。
 過酷な環境でも生き抜けるスイギュウです。
 モップ犬。プリ。
 もじゃもじゃの毛を持つこの犬は、寝ていると、本当にモップのよう。
 とても賢い犬で、羊の放牧犬として活躍してきた、これまたハンガリー固有種のワンちゃんです。
 そして、ハンガリーで忘れてはならないのが「馬=ロー」。
 遊牧騎馬民族として、アジアは、カザフスタンの辺りからハンガリーの大平原へとやってきたハンガリー人の祖先。
 限りない山や谷を越え、目の前に広がった広大なるプスタに安住の地を見出したのかもしれません。
 馬=ハンガリー人。
 そう言っても過言ではないほど、古くから、ハンガリー人にとって馬は大切な存在。
 馬がいなければ、今、このヨーロッパのど真ん中にハンガリーは存在していなかったかもしれません。
 馬と人とは、特別な信頼関係で結ばれています。
 そう語るKun Péterさん。
 苗字に、「クン」つまり、クマン系の祖先を持つペーターさん。
 家族と大平原の家「タニャ」に暮らしながら、自分のルーツを研究し、カザフスタンやアジアを起源に持つ民族の文化、歴史を後世に伝える仕事をされています。
 タニャ。
 大自然の中で、動物と共に暮らす家族。
 愛する家族と一緒にタニャに暮らす、ペーターさん。
 最近、ベシェちゃんが誕生し、家族が増えました。
 お兄ちゃんのレグーくんもしっかりしてきた様子。
 プスタに欠かせないもの。
 それは、このはねつるべ井戸。
 草原の中にぽつんと立っているこの井戸は、家畜の水飲み場として使われています。
 空が真っ赤に染まる夕暮れ。
 つるべ井戸のシルエットが美しく浮き上がります。
 何世紀も変わらぬ自然が残る平原。
 ここで変化があるのは天気だけ。
 
 大平原、プスタの真ん中に立っていると、自分がいつどこに存在しているのか分からない、不思議な気持ちになります。
 こちらは、伝統的な大平原の建物「Csárda:チャールダ」。
 元々は食事のできる旅籠屋でした。
 何もない大平原の中を馬で移動していた時代に、欠かせない存在であったチャールダ。
 ホルトバージには、17世紀末に建てられたハンガリー最初のチャールダが残っています。
 長旅で疲れた人と馬を休ませ、食事を与える安らぎの場チャールダ。
 今は、レストランとして当時の面影を残したまま、利用されています。

 ホルトバージは、タニャもいいですし、レストランではありますが、歴史のあるチャールダの窓も面白いかと思います。

 ※24日月曜日にクン一家と会って、サンプルのDVDをお見せしお話しをすることになっています。

  撮影:JapHun MediArt、他ネットアーカイブ